最新医学社
要旨
最新医学 別冊 新しい診断と治療のABC 47/精神4
摂食障害
第1章 概念・定義
●摂食障害の概念と歴史
切池 信夫 大阪市立大学大学院医学研究科神経精神医学 教授
要旨
摂食障害は,主に神経性食思不振症(anorexia nervosa)と神経性過食症(bulimia nervosa)からなる.ここでは神経性食思不振症以前の時代に精神的原因により少量の食物しか食べず骨と皮までやせていった聖女の断食,奇跡の少女を紹介し,次いで神経性食思不振症や神経性過食症の概念が誕生した歴史的背景と現在に至るまでの経緯を述べる.
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第1章 概念・定義
●摂食障害の疫学
中井 義勝 烏丸御池中井クリニック 院長
要旨
病院を受診した摂食障害患者数推計値はこの20年間に約10倍,5年間で約4倍増加していて,世界でもトップクラスである.とりわけ神経性過食症の増加が著しい.女子学生を対象とした摂食障害の推定発症率は,神経性食思不振症は0.3%,神経性過食症は2.2%,特定不能の摂食障害は12.1%でこの10年間に約3倍増加している.転帰調査の結果,粗死亡率は7%で,回復49%,部分回復9%,摂食障害35%であった.
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第2章 病理・病態
●摂食障害の臨床症状
山田 恒 大阪市立大学大学院医学研究科神経精神医学 病院講師
要旨
摂食障害の臨床症状を,精神症状,行動異常,身体症状の3つに分けて説明する.精神症状として,やせ願望と肥満恐怖,身体像の障害,病識欠如,その他に抑うつ,不安,強迫,失感情症などがみられる.行動異常として,不食や摂食制限,過食などの摂食行動異常と自己誘発性嘔吐,下剤乱用などの排出行動,活動性の変化,問題行動などを認める.身体症状としては,体重減少,月経異常などを生じる.
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第2章 病理・病態
●身体合併症と精神合併症(併存症も含む)
瀧本 禎之 東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学
要旨
摂食障害患者は,その経過中にさまざまな身体的合併症と精神的合併症を呈する.中でも神経性食思不振症においては,低栄養状態によって致死的な身体的合併症を来すこともまれではない.また,高齢者などでみられる通常の飢餓状態と異なる検査所見を示すこともあり,知識がない場合にはその対処に苦慮することもある.また,精神的合併症を有する例も多く,常に精神的合併症に配慮しておく必要がある.本稿では,摂食障害にみられる代表的な合併症について概説する.
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第2章 病理・病態
●病因と発症機序
井上 幸紀 大阪市立大学大学院医学研究科神経精神医学 准教授
要旨
摂食障害の病因については多くの仮説がある.しかし,1つの仮説だけですべてを説明することはできず,多くの要因が関与していると考えられるようになった.現在最も広く受け入れられているのは,文化・社会的要因,心理的要因,生物学的要因などが複雑に相互に関連しあって発症する多次元モデル(multi-dimentional model)である.ここでは個別に説明を行い,その関連についてまとめる.
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